大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(ラ)699号 決定

和解はこれを調書に記載したときは、民事訴訟法第二〇三条によつて確定判決と同一の効力を有するものであるから、それに違算、書損その他これに類する明白な誤謬があるときは、裁判所は同法第一九四条を準用して、いつでも申立により又は職権で更正決定することができ、そこにいう明白な誤謬とは、調書の記載自体によつて判明する場合はもちろん、新たな証拠調をなすことなどは許されないが、その事件に従来現われた訴訟資料の全部からして明白な誤謬だと知り得るような場合には、それが第一四七条にいう調書の形式的記載事項であつても差支えがないと解するを相当とする。本件記録によれば、当初の和解調書には申立人代理人北川一雄出頭、相手方沓沢栄六出頭、当事者の表示として申立人戸川磯次郎、相手方沓沢栄六、申立人代理人北川一雄と記載されていて、再抗告人の申立によつて、葛飾簡易裁判所は右和解調書について、「申立人代理人北川一雄」とあるを「申立人戸川磯次郎出頭」と、「相手方沓沢栄六出頭」とあるを「相手方代理人北川一雄出頭」と、又当事者目録中「申立人訴訟代理人」とあるを「相手方訴訟代理人」とそれぞれ更正決定をなした。それに対し相手方から即時抗告がなされ、原裁判所が再抗告人主張のように、当事者目録を更正した部分については抗告を棄却し、調書の内容については更正決定を取消した。なお、本件の起訴前の和解の申立は再抗告人本人がなし、相手方の代理人である弁護士北川一雄に対する委任状が提出されていることも、本件記録により明かである。右当事者目録の部分を更正した点は確定しているのであるから、右和解調書の記載によれば、相手方の代理人である北川一雄が申立人の代理人として和解期日に出頭したことになつている。しかしながら、再抗告人主張のように、起訴前の和解手続で相手方の代理人であるものが、申立人の代理人として出頭するというようなことは殆んど考えられないことであることと、又和解調書の記載によれば、当事者二名が出頭して和解が成立したことが明かであるから、その一方が相手方代理人北川一雄である以上、他の一人が申立人本人であることが、右和解調書の記載自体からしても、さらに、上記和解の申立書と北川一雄に対する委任状及び本件記録に申立人の委任状の提出がないことを参酌すれば、一層明白であると認めることができる。従つて、右和解調書に「申立代理人北川一雄出頭」と記載されているのは「申立人戸川磯次郎出頭」、「相手方沓沢栄六出頭」とあるは「相手方代理人北川一雄出頭」とのたんなる記載上の誤謬であると解するを相当とする。そうだとすれば、葛飾簡易裁判所が右の点についてなした更正決定は相当でこの点について右更正決定を取消した原決定は失当である。

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